新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
皐月くんがふと首を動かし、視線を床に落とした。
「礼が記憶喪失になったと知ったとき、俺が何を考えたかわかるか? ……ああ、これは、チャンスかもしれないって。契約結婚だと知らない今の礼となら、もしかして普通の──……本物の夫婦に、なれるんじゃないかって。今まで以上に甘やかして囲っていれば、いつかは俺のことを愛してくれるようになるんじゃないかって。おまえがまとめた荷物を元通り片づけたこの家に何食わぬ顔で迎え入れて、おまえにそれらしい優しい言葉をかけながら……俺はそんな、最低なことを考えていたんだよ」
呆然とする私を前に、ひと言ひと言、噛みしめるように、吐き捨てるように、激情を孕んだ自らの胸の内をさらけ出す。
そして再び顔を上げた彼の強い眼差しが、私を射抜いた。
「きっと、俺の方が欲張りで、綺麗な感情じゃないけど……でも、もう、隠さなくていいんだな?」
右手を持ち上げ、私の頬にそっと触れた。
心臓がありえないくらい速く脈打っていて、けれども、ひたすらに彼の言葉を待つだけの私は、まったく気にならない。
「俺が礼に、どんな感情を向けてるか──……伝えても、触れても、いいんだな……?」
確認する声は、震えていた。
そんな皐月くんを見つめる私の両目から、ポロポロと涙がこぼれ落ちる。
感極まって何も言えなくて、だからせめて頬を撫でる彼の手に自分の手のひらを重ね、強く握った。
言って欲しい。触って欲しい。
その行動と彼に向ける眼差しで想いが伝わったのか、きゅっと眉を寄せた皐月くんが、沈黙を破った。
「礼が記憶喪失になったと知ったとき、俺が何を考えたかわかるか? ……ああ、これは、チャンスかもしれないって。契約結婚だと知らない今の礼となら、もしかして普通の──……本物の夫婦に、なれるんじゃないかって。今まで以上に甘やかして囲っていれば、いつかは俺のことを愛してくれるようになるんじゃないかって。おまえがまとめた荷物を元通り片づけたこの家に何食わぬ顔で迎え入れて、おまえにそれらしい優しい言葉をかけながら……俺はそんな、最低なことを考えていたんだよ」
呆然とする私を前に、ひと言ひと言、噛みしめるように、吐き捨てるように、激情を孕んだ自らの胸の内をさらけ出す。
そして再び顔を上げた彼の強い眼差しが、私を射抜いた。
「きっと、俺の方が欲張りで、綺麗な感情じゃないけど……でも、もう、隠さなくていいんだな?」
右手を持ち上げ、私の頬にそっと触れた。
心臓がありえないくらい速く脈打っていて、けれども、ひたすらに彼の言葉を待つだけの私は、まったく気にならない。
「俺が礼に、どんな感情を向けてるか──……伝えても、触れても、いいんだな……?」
確認する声は、震えていた。
そんな皐月くんを見つめる私の両目から、ポロポロと涙がこぼれ落ちる。
感極まって何も言えなくて、だからせめて頬を撫でる彼の手に自分の手のひらを重ね、強く握った。
言って欲しい。触って欲しい。
その行動と彼に向ける眼差しで想いが伝わったのか、きゅっと眉を寄せた皐月くんが、沈黙を破った。