新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
答える皐月くんの口調は淡々としていて、聞いた直後は失敗してしまったと思った。

けれど、お姫様抱っこで軽々と運ばれながら見上げた彼は、今にも暴走しそうな衝動を必死で抑えつけている表情で。

その情欲に塗れた顔に気づいたとたん、私の心臓はさっきまで以上に早鐘を打って体温を上げる。



「礼……」



あっという間に皐月くんの部屋へとたどり着き、まるで壊れ物を扱うかのような優しい仕草でベッドに下ろされた。

熱っぽく甘い声音で私の名前を呼びながら、覆い被さる形で馬乗りになった彼が私の左頬を撫でる。

私は、ただひたすらに胸を高鳴らせていて。愛おしそうに自分を呼ぶ彼のことを、二度と忘れまいと目に焼き付けた。



「皐月くん、好き、大好き。幸せすぎて、やっぱり夢みたい」



そう話す私は、自然と泣き笑いの表情になっていた。

にじんだ涙で潤む視界の中で、皐月くんも笑っている。



「夢にされたら困る。もちろん、また忘れられても、な」

「うん、大丈夫。階段から転げ落ちたって、雷に打たれたって……もう絶対、忘れないよ」

「ああ、頼む。愛する妻が自分のことを忘れるなんて、もう、二度とごめんだ」



断言しながら笑いかけると、力強く答えてくれた。

『愛する妻』という言葉がうれしすぎて、じーんとしてしまったのが表情に現れていたんだと思う。

皐月くんはふっと笑みをこぼすと、私の左手を取って薬指のリングに口づける。
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