新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
「……ああ。よかったな、ほのかさんとうまくいって」

「わはは、どーも! 俺がんばったからな~」



少し茶色がかった短髪をかきながら、菊池が今度は照れたように笑う。

つい先日、この男には恋人ができた。

さかのぼること2ヶ月ほど前の話だ。
今夜のように飲みの約束をしていた菊池と俺のふたりがたまたま目についたスペインバルを訪れた際、これまた偶然、同期のひとりである女性、宮坂 礼とバッタリ遭遇した。

そのとき彼女と一緒にいたのが、のちに菊池の恋人となるほのかさんだ。

彼女は宮坂の学生時代からの友人らしく、場の流れで4人一緒に飲むことになってから、いち早く菊池と意気投合していた。

別れ際に連絡先を交換し、その後もふたりは親睦を深めていたらしい。

めでたく付き合うことになったと報告を受けたのが、1週間ほど前。同じメンバーで焼肉屋に集まったときのことだ。



「どうだ? まだ振られる気配はなさそう?」

「うわ、ひっでぇな。あいにくですが、ラブラブですぅ~」



待ち合わせの時間にあまり遅れなかったとはいえ、菊池は俺が来た時点ですでにほろ酔い気分である。

俺の揶揄に不満げな顔で唇を尖らせているが、まったくかわいくないしむしろ成人男性がやっても鬱陶しいだけだ。

少しずれていたメガネのブリッジを人差し指の第二関節で押し上げ、俺は乾いた笑いを返す。



「なんだ。おもしろくないな」

「おもしろがるなよ、今が付き合いたての大事な時期なんだからな!」

「はいはい。まあ、幸せそうで何より」

「おう、ありがとな!」
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