新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
初めてのまともな“恋”は、その後も俺の頭を悩ませ続けた。

ただの同期から関係を進展させたいと思っていても、菊池に想いを寄せていた彼女の気持ちを考えると躊躇われて、行動を起こすことができない。

そもそも俺は、結婚に対して夢も希望もなかった自分の恋愛観を彼女に話してしまっている。

そんな男から今さら好きだなんだと言われたところで、不信感しか湧かないはずだ。

……ならば自分は、このままでいよう。

俺はおまえを害する存在にはならないと、何食わぬ顔で、彼女に近しい同期の座にい続ける。

どうせ困惑させるだけなら、この感情は胸の内に秘めて、誰にも知られないよう押し殺した方がいいはずだ。

そんなふうに言い訳ばかり並べ、ずっと決定的な言動を避け続けていた俺に一世一代の好機が訪れたのは、自分の気持ちを自覚してからすでに2年以上が経過した冬のことだった。

その年の4月、宮坂は俺と同じ本部ビル内にある本店営業部へと異動してきて、今までより近い距離に彼女がいることを俺は密かによろこんだ。

だが浮かれる俺を他所に、当時彼女はある特定の顧客から執拗に付きまとわれていることに悩んでいた。

そして、同期という気安さからか、それを俺に相談してきたのだ。
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