新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
「礼? 顔異様に赤いけど、熱出たんじゃないか?」

「や、はは、ちょっとのぼせちゃったかな」

「そうなのか?」



誤魔化すように笑った私に、皐月くんはまだ心配そうな表情をしている。

ああもう、こんなこと考えるなんて、まるで変態じゃない。

皐月くんに心配までさせて、私、馬鹿!



「のぼせたくらいならいいけど……礼も麦茶飲むか?」



少しでも上がった体温を冷やそうとパタパタ片手で顔を扇いでいると、彼がそう言って冷蔵庫を開けた。

新しいグラスも出し、わざわざピッチャーから麦茶を注いでくれる皐月くんに私は恐縮する。



「ごっ、ごめんね皐月くん」

「このくらいで謝らなくても。ほら」



差し出されたグラスを、「ありがとう」とつぶやきながら受け取ろうとした。

だけど受け取る瞬間、彼の手と私の指先が触れて──ビクッと震えた私は、あろうことか反射的に手を引っ込めてしまう。



「あっ!!」



ゴツ、と音をたてて、床にグラスが落下した。

白いフローリングに茶色い液体が広がる。

火照っていた頬から、さっと血の気が引いた。



「ごめんなさい……!」

「いや、こっちこそ離すのが早くて悪い。服にかからなかったか?」



声を荒らげることもなくそう言ってくれる旦那サマが優しすぎて、涙が出そうだ。

首を横に振って「私は大丈夫」と答えてから、近くにあったキッチンクロスを手にしてしゃがみ込んだ。
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