新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
「えっと……」



たしかに……今日は午前中からなかなか精力的に動き回っているため、すでに多少の疲労は感じていた。

迷いながら視線を外した私に、皐月くんはさらに言い募る。



「今日は初回だ。無理することはないだろ」



威圧感はないものの若干強めの声音に諭され、素直にうなずいた。

スマホのディスプレイを見て確認した現在時刻は、17時少し前。

並んで駅に向かって歩道を進みながら、私たちが言葉を交わすのは夕飯についての話題だ。



「今から帰ってわざわざ作ることないからな。このまま外で食べてもいいし、買って帰ってもいい」

「ありがと。うーん、どうしようか」



彼の気遣いに感謝しつつ、ふと自分の左側に立ち並ぶお店を見る。

そしておもむろに足を止めた。



「礼?」

「……皐月くん。せっかくだし、今晩はこういうお店はどうかな?」



不思議そうな顔で同じく立ち止まった皐月くんに向かって、高まる感情を抑えつつもおずおずと提案した。

私が指さす先にあるもの。『こういうお店』とは、様々な年代の人が普段から気軽に利用しているであろうチェーン居酒屋だ。
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