新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
「じゃあ、これは?」
「うーん……リス?」
「わあ、当たり! すごいすごい、皐月くん~!」
周囲の喧騒が耳に届く簡易的な個室内に、いつもよりはしゃいだ自分の声が響く。
席についてから早1時間近く。まるで子どものようにパチパチと両手を叩く私は、摂取したアルコールの影響でだいぶ愉快な心地になっている。
掘りごたつ席の向かい側に座る皐月くんは、ゆったりした様子でテーブルに頬杖をついていた。
ちなみに現在私たちは、テーブルの上のお客さまアンケートに添えられたボールペンと紙ナプキンを使い、不本意ながら画伯と称される私が何の絵を描いたかを当てるゲームをしている真っ最中である。
私の手もとの紙ナプキンから視線を上げ、こちらと目を合わせた彼が微笑んだ。
「なんとなく、尻尾でそうかなって」
「うううれしい……こないだフラッフィーの黒板に描いたときは、古都音さんにもお客さんにも『顔が凶暴すぎるネズミ』って言われて笑われたのに……」
「顔つきはともかく、ネズミなら近いんじゃないか」
本気で感激している私に対し、皐月くんはさらにフォローする言葉をかけてくれる。
優しい……あのとき呼吸困難になりそうなほど大笑いしていた古都音さんに聞かせてあげたい……。
ちなみに描いた絵は、このリスで4個目。
今のところ彼は、あっさりと全問正解している。