新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
当行の歴史や業務内容を学んださっきの時間、講師の本部役員が使うスライド内で紹介されたマスコットのマネリンちゃん。

そのゆるかわいいビジュアルが気に入って、休憩時間になってから自分のレジュメの端っこに描いてみたんだけど……。



『やっぱり、似てないかなあ……』



これを見て笑っているということは、やはりそういうことなのだろう。

ちょっぴりしょぼんとしながらつぶやいた私に、口を覆う手を外して越智くんが答える。



『いや、似てないとかいうより、もはや別の生き物というか』

『そっかあ……私、よく友達にも画伯って呼ばれるんだよね』



さらに続けた私のセリフに、越智くんがメガネの奥にある目を細めてまた笑った。

イケメンな人だから、その笑顔にちょっとドキッとしてしまう。正直、タイプな顔ってわけじゃないんだけど……。



『まあ、こう言っちゃ悪いけど、たしかに味がある絵だな。でも、俺は、好きだよ』



ささやきながら、私が描いたマネリンちゃんを長くて節ばった指がなぞる。

彼が『好き』だと言ったのは絵のことで、私自身が言われたわけじゃないのに……また、心臓がはねた。



『あ、ありがと、越智くん』



照れくさくなりながらも、お礼を伝える。

私が自分の名前を知っていたというのに驚いたのか、越智くんは一瞬きょとんと目を丸くしてから、また頬を緩めた。
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