新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
私の記憶の中のカレンダーは、4月の初め。

けれども実際、今はもう7月の半ばらしい。

どうりで窓から見える外の景色がやたらと眩しくて、木々の緑も青々としているはずだ。

それでも病院内は空調がきいているため、夏を思わせる暑さは感じられない。

……目が覚めたら、7年後の世界だったとか。

まさか自分の身にこんなことが起こるなんて、思ってもみなかった。

いや、正確には世界が変わったんじゃなくて、私だけが変わってしまったんだけど。

さっきお手洗いの鏡で、現在の自分の姿を確認した。

よろこぶべきところなのか、顔自体にあまり変化はない。

二重で少しつり気味のいわゆる猫目に、高くも低くもない鼻、標準的な大きさの唇。
その左下に、ぽつんとあるホクロ。

身長も157cmと平均並みな自分は、どこにでもいる普通のアラサー女子に見える。

記憶にある自分の姿とずいぶん変わったところといえば、髪型だ。背中まであったストレートの黒髪がバッサリと切られ、今はチョコレート色のウェーブがかったボブがふわふわと肩の上で揺れている。

少なくとも、22年間生きてきた今の私にはしたことのないヘアスタイル。首もとがスースーするのが落ちつかなくて、何度もうなじを触ってしまう。

目が覚めてからずっと、どうにも居心地の悪さを感じてばかりだ。
掛け布団で自分の顎先まで覆った私は、人知れず吐息を漏らす。

壁際にあった丸椅子を引き寄せた越智くんが、ベッド横の私のおなかあたりの位置で腰を落ちつかせた。
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