【社内公認】疑似夫婦-私たち(今のところはまだ)やましくありません!-
「どうも。森場涼真です」
……やっぱり憶えてないかぁ。まあ、わかってたんですけどね……。
あらためて間近で見ると、彼には昔の面影がしっかりと残っている。裏表のなさそうな澄んだ瞳に、スッと通った鼻筋。明朗さを物語る口角の上がった口元。――輪郭は、子どもの頃に比べるとだいぶシャープになっているけれど……素材は一緒だ。彼は子どもの頃から格好良かった。
(私もさほど変わってないと思うんだけどなぁ……)
素材は変わらないし。化粧も派手なほうではないし。
二十年近く昔のことだから、こういう反応は覚悟してたんだけどね。
すぐに切り替え、私も笑顔を作った。
「はじめまして。よろしくお願いします」
うん、それもいい。大人になったんだから一から関係を始めるのだって悪くない。
どうせ縁のない他人のまま終わるかもしれなかったんだから。それに比べれば、全然いい。
――そう割り切って彼との挨拶を終えようとしたとき、森場くんは〝ハッ!〟と何かに気付いた顔をした。
「吉澤さん、もしかして……!」
「えっ」
まさか思い出した!?
一度落ち込んだ心が期待で盛り返す。奇跡の再会、あるかもしれない!
しかし私が喜んだのも束の間、彼は私の背後を覗き込むと――手のひらで背筋を〝さわさわっ〟と撫で上げた。
「うっひゃあ……!」