【社内公認】疑似夫婦-私たち(今のところはまだ)やましくありません!-
商品企画部で働く森場くんは普段はスーツを着ない。会社ではTシャツの上にジャケットを羽織り、比較的ラフな格好で仕事をしている。それがまたこなれていて、お洒落で、女子社員の人気が高いのはそういうビジュアル面も理由だと思う。
(もちろんそれだけじゃないけど……)
内面の魅力は私もまだ次々と発見しているところで、一概には語れない。
「なっちゃん」
「はい?」
「次はもうちょっと雰囲気を維持しよう」
「雰囲気を維持……」
「俺も、なっちゃんが笑っちゃわないように頑張るから」
「うん……」
返事をしながら、〝それは無理じゃないかな〟と思った。いろいろ言ってしまったけど、笑ってしまった一番の理由は〝恥ずかしさに耐えかねて〟なので、森場くんの頑張りではどうにもならない気がする。
しかし彼はどうしても今の関係を続けたいらしく、真剣に思案している。
「そうじゃないとこの関係を結んだ意味がないだろ」
「そうだねぇ……」
前の晩にさも男女の営みがあったことを匂わせる朝の会話。漫画や映画の表現技法で俗に『朝チュン』と呼ばれる演出〝だけ〟をリアルで繰り返す。私たちの関係は至って健全。それでも――私たちは〝夫婦〟だ。
もちろん、籍は入れていない。ある事情から、私たちは会社公認で、期間限定の〝疑似夫婦〟を演じている。
(未だにワケわかんないなぁ、このシチュエーション……)
こんな不可思議な関係を結んだ意味を、正直私は今もよく理解していないのだけど、黙っておく。
こうやって森場くんと過ごせる朝と夜が心地よくて、もう手放せなくなっているから。
どうしてこんな意味不明な関係を結ぶことになったのか――――事の始まりは、一カ月ほど前に遡る。
(もちろんそれだけじゃないけど……)
内面の魅力は私もまだ次々と発見しているところで、一概には語れない。
「なっちゃん」
「はい?」
「次はもうちょっと雰囲気を維持しよう」
「雰囲気を維持……」
「俺も、なっちゃんが笑っちゃわないように頑張るから」
「うん……」
返事をしながら、〝それは無理じゃないかな〟と思った。いろいろ言ってしまったけど、笑ってしまった一番の理由は〝恥ずかしさに耐えかねて〟なので、森場くんの頑張りではどうにもならない気がする。
しかし彼はどうしても今の関係を続けたいらしく、真剣に思案している。
「そうじゃないとこの関係を結んだ意味がないだろ」
「そうだねぇ……」
前の晩にさも男女の営みがあったことを匂わせる朝の会話。漫画や映画の表現技法で俗に『朝チュン』と呼ばれる演出〝だけ〟をリアルで繰り返す。私たちの関係は至って健全。それでも――私たちは〝夫婦〟だ。
もちろん、籍は入れていない。ある事情から、私たちは会社公認で、期間限定の〝疑似夫婦〟を演じている。
(未だにワケわかんないなぁ、このシチュエーション……)
こんな不可思議な関係を結んだ意味を、正直私は今もよく理解していないのだけど、黙っておく。
こうやって森場くんと過ごせる朝と夜が心地よくて、もう手放せなくなっているから。
どうしてこんな意味不明な関係を結ぶことになったのか――――事の始まりは、一カ月ほど前に遡る。