可愛がりたい、溺愛したい。



「っ……!」


たったこれだけの動作が、わたしをどれだけドキドキさせてるか依生くんはぜったいにわかっていない。



動揺しちゃいけないって言い聞かせようとするのに、
触れられたところが熱をもって冷めないまま、それが顔全体に伝染したみたいになって。



「……帆乃の顔りんごみたいに真っ赤。可愛い」



嬉しそうな声のトーンで依生くんが言うから、恥ずかしくなってパッと顔を伏せる。



「あー、もっと見たかったのに。
こっち向いてよ」


「や、やだよ……」



こんな真っ赤な顔これ以上見られたくない。



「もっかい見せて」


耳元でわざと、ボソッとささやきながら誘惑するような言い方をするのはずるい。



「恥ずかしがる帆乃も可愛いね」


イジワルさを含んだ声が聞こえたと同時。

< 10 / 360 >

この作品をシェア

pagetop