可愛がりたい、溺愛したい。



「近くに雷落ちて停電したみたい」


「そ、そっか。えっと……」


どうしようって考えていると、なんの前触れもなく突然目の前の扉がガチャッと開いた。


開けたのはわたしじゃない。


……ということは



「とりあえずお風呂場から出たほうがよくない?」



「うわぁぁぁ!!
な、なんで開けるの!?」


開けたのは依生くんしかいないわけで。



「なんでって暗くて何も見えないでしょ?」


ちょっとまって、無理……!!
こっちに明かり当てないで……!!


逃げるように、あわてて足を後ろに下げれば。



「こ、こっち来ないで……きゃぁ!!」


あぁ、やってしまった。

ありがちな展開……。



見事に足を滑らせたわたしは……



「えっ、ちょっ、帆乃?」


「うぅ……痛い……」


浴槽の角に頭をぶつけてしまい、急激な痛みが走る。


自分の姿が今どうなってるとか、そんなことを気にしてる場合じゃなくなった。

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