可愛がりたい、溺愛したい。



ぶつけた衝撃で頭がクラクラして、お風呂に長い間浸かっていたせいもあってか、意識がぼんやりしてくる。


「……ほ……の」


あぁ、なんだか依生くんの声がどんどん遠ざかっていくような気がする。


そのまま、グダッと力が抜けて意識を手放した。



***



次に目を覚ました時は、まだ暗闇の中で。


「ん……」


閉じていたまぶたをゆっくり開けると、いま自分の身体がソファかベッドに横になっているのがわかる。


明かりはまだ復旧していない。


まだ頭がズキズキ痛むことから、倒れてからそんなに時間は経っていないと思った。



「……帆乃?目覚めた?」


暗闇の中で、横になるわたしのすぐ隣から依生くんの声がした。



「あ……う、うん」


「急に倒れるし、頭ぶつけるし意識失うから心配した」


さっきまでの出来事がバーッと頭の中を駆け巡り出して、恥ずかしすぎて穴があったら入りたい。


さいわい、今は暗いことだけが救い。

< 116 / 360 >

この作品をシェア

pagetop