可愛がりたい、溺愛したい。
待つこと数分。
「お待たせ。
はい、これ先輩にあげる」
そう言って渡されたのは、パックのグレープフルーツジュース。
「え、なんで?」
「勉強教えてくれたお礼?」
「えぇ、わたしほとんど何もしてないのに」
「わかんないなりに教えてくれよーとしてたじゃん?受け取ってよ、大したもんじゃないけど」
「あ、ありがとう」
こういう一面もあるんだって思いながら、再び歩き始める。
特に会話がないまま、駅に着くかと思いきや。
「ねー、いっこ聞いていい?」
突然葉月くんが足を止めて、わたしのほうを見た。
「なに?」
何気なく、軽く返事をすると。
「……幼なじみとして三崎先輩のそばにいるのってつらくないの?」
まさかそんなことを聞かれるとは微塵も思っていなかったので、固まる。