可愛がりたい、溺愛したい。
「俺を好きになってくれれば、三崎先輩以上に大事にするのに。
そんなに三崎先輩がいい?」
不意に片腕をつかまれて、引き寄せられる。
その距離の近さに、とっさにつかまれた腕を振りほどこうとしたけど、力じゃかなわなかった。
「三崎先輩を想い続けても、苦しい思いをするのは帆乃先輩だって覚えといたほうがいいよ。
しょせん幼なじみなんだから」
耐えられなくなった。
わたしが今まで目を背けていたところを、ぜんぶ見透かしてくるから。
「は、離して……っ」
震える声で言うと、あっさり解放されたので、
逃げるようにその場から走り出した。
「……あーあ。これでもダメか。
だったら多少荒く強引にしちゃうのも仕方ないかあ」
葉月くんがこんなことをつぶやいていたことも知らずに。