可愛がりたい、溺愛したい。



「俺を好きになってくれれば、三崎先輩以上に大事にするのに。

そんなに三崎先輩がいい?」


不意に片腕をつかまれて、引き寄せられる。

その距離の近さに、とっさにつかまれた腕を振りほどこうとしたけど、力じゃかなわなかった。



「三崎先輩を想い続けても、苦しい思いをするのは帆乃先輩だって覚えといたほうがいいよ。

しょせん幼なじみなんだから」



耐えられなくなった。

わたしが今まで目を背けていたところを、ぜんぶ見透かしてくるから。



「は、離して……っ」


震える声で言うと、あっさり解放されたので、
逃げるようにその場から走り出した。



「……あーあ。これでもダメか。

だったら多少荒く強引にしちゃうのも仕方ないかあ」



葉月くんがこんなことをつぶやいていたことも知らずに。

< 169 / 360 >

この作品をシェア

pagetop