可愛がりたい、溺愛したい。



危険だと思って、すぐに逃げ出そうとしたのに。



「あまいよ先輩。逃げないで」


両手首を片手であっさり拘束されてしまい、そのまま頭上に持っていかれた。



「抵抗したら縛ってもいーんだよ?」


空いている片手で自らのネクタイに指をかけながら、もう片方の手はわたしの手首をつかんだまま。


力ではかなわないことを示すように、力をグッとこめてくる。



「すっかり油断したでしょ?
何もなく今日まで来て、このまま終われば解放されるって」



急な態度の豹変についていけないし、何より恐怖を感じて震えが勝ってしまって身体に力がうまく入らない。



「……残念だけど、
俺はそこまでイイコじゃないよ」

< 173 / 360 >

この作品をシェア

pagetop