可愛がりたい、溺愛したい。
急に聞こえてきた音に身体をビクッと震わせながら、視線をそちらのほうへ向けた。
そして一瞬にして空気が凍った。
そこにいるはずのない……人物の姿を目の当たりにして、息をするのを忘れて固まる。
「あー、やっと来た。タイミングばっちり」
まるで、このときを待っていたと言わんばかり。
この状況に驚かないということは、こうなることを仕組んでいた……から。
「せっかくだから帆乃先輩の迎えを頼んだんだー。会いたかったでしょ?
……三崎先輩に」
まんまと葉月くんの罠にはまってしまった。
わたしがあれだけ、依生くんにばれるのを恐れていたのを知っていながら、ここに呼びつけるなんて……。
こわくて依生くんのほうを見ることができない。
嘘をついてまで、葉月くんと2人っきりでいるのを、今この瞬間見られてしまったから。
ただ、わかるのは……
「……何してんの帆乃」