可愛がりたい、溺愛したい。
触れるだけのキスでも耐えられないのに、
開けた口の隙間からうまく入り込んで、さらに深く口づけをしてくる。
「……んっ……はぁ……っ」
こんなに甘いキスをしてくるくせに、わたしのことはなんとも想っていないなんて……。
わたしばっかりが好きで好きで……。
だけど依生くんは、好きでもない相手にこんなふうに簡単にキスできてしまうひどい人……。
きっとこういうことをするのは初めてじゃないんだ。
だってキスが慣れているから。
今までわたしが知らないだけで、依生くんはキスや、キス以上のことを他の人としていたのかもしれない……なんて。
今さらながらそんなことが頭に浮かび、悲しさが我慢できず、閉じていた瞳からポロッと涙が頬を伝った。
「……あーあ、泣いちゃった」
ようやく唇が離れて、力がすべて抜けて壁にもたれかかったまま地面に座り込んだ。