可愛がりたい、溺愛したい。
フリじゃなかった。
いつもと変わらない朝が来た。
さっきから何度も何度もスマホのアラームが鳴っているのに、一向に起きられない。
ここ数日、こんな朝を繰り返している。
依生くんの声だったら一度で目が覚めるのに……なんて今さらそんなこと考えても仕方ないこと。
あの日から依生くんはパタリとわたしのそばからいなくなった。
毎朝起こしにくることも、一緒に登下校することも、
いつも当たり前にそばにいることも。
……だから嫌なんだ。
一時の感情の高ぶりのせいで、こうやって溝ができてしまうことが。
何年も一緒にいたのに、崩れるのは一瞬。
わたしがいちばん恐れていたのは、依生くんのそばにいられなくなること。
今までどおり、黙って何もできない幼なじみをやっていればよかったのに…。
他人の言葉でここまで翻弄されて、惑わされてしまった自分のせい。
これじゃ葉月くんの思うつぼ……。