可愛がりたい、溺愛したい。
焦ったせいで、いつもより声を張って止めに入ると、お母さんは驚いた顔をしながら。
「そ、そう。
じゃあやめておくわね?」
今のわたしの反応から何かあったのか察したのか、お母さんは控えめに言った。
「……じゃあ行ってきます」
残りの朝ごはんを無理やり詰め込んで、逃げるように家を出た。
1人で乗る朝の電車は苦しくて仕方ない。
学校の最寄りまで数駅だけど人の数がすごすぎて、息苦しい。
……いつもは依生くんがそばにいてくれて、苦しくならないように、周りから守ってくれていたから。
ふと、電車の扉の窓に映った自分の姿。
……情けない顔。
少し下に目線を落とせば、へなっとした形の整っていない結び方をされたリボン。
なんだ……できないのはフリじゃなかった。
いつしか、依生くんがいないと本当にダメになってしまったんだ。