可愛がりたい、溺愛したい。



「ねー、三崎先輩。
何も言わないんですか?」


歩いて去っていく後ろ姿に葉月くんが少し大きめの声で言う。


すると足は止まり、こちらを向きながら。



「……何もないけど。
ってか、いちいちなんで僕に聞くわけ」


苛立っているのか、早くこの場から去りたいのか、面倒くさそうな表情と声のトーン。



「じゃあ、俺がもらっていいんですね」


「勝手にすれば。
もうカンケーないし、好きにすればいいでしょ」



こんな言葉で傷ついてしまうわたしの心は、どこまでも弱くて脆い。


ここで泣くわけにはいかないけど、胸が痛くて苦しくて張り裂けそう。



冷たい言葉を残したまま、去っていく後ろ姿を追うこともできず、ただ見つめるだけ。


「だって、先輩。どうする?
冷たいね、カンケーないだってさ」


……あっけなさを目の当たりにした。



「とりあえず教室まで行かないと遅刻しそうだからいこーか」


何も喋る気になれず、腕を引かれたまま教室へ連れていかれた。

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