可愛がりたい、溺愛したい。
それなのに、わざわざわたしをかばってくれるなんて。
すると、タイミングよくチャイムが鳴り
「あー、チャイム鳴ったね」
目の前にある大きな背中が、急にこちらを振り返って。
「ほんとはもっと先輩といたかったけど。
まあ、また会いに来るから」
さっきまでの出来事は何もなかったように、にこっと笑っていた。
そして最後に釘をさすように教室のほう向けて
「今のはぜんぶ俺が思ったことを言っただけなんで。間違えても帆乃先輩に言いがかりとかはやめてくださいね?
そんなことしたら女の人でも容赦しないんで」
おそらく中井さんたちに向けて言ったんだ。
葉月くんが去ったあと、わたしに何も危害が及ばないように。
中井さんたちはムッとした顔をして、都合が悪そうに各自別れて自分の席へと散っていった。
「こんだけ言っとけば大丈夫だと思うけど。
もしあの人たちになんかされたら俺に言って」