可愛がりたい、溺愛したい。
急にこんなふうに優しくされると調子が狂う。
「あ、ありがとう……かばってくれて」
「ふっ、どーいたしまして。
珍しいね、先輩が素直にお礼言ってくれるなんて」
「珍しくないもん…」
「まあ、俺嫌われることばっかしちゃってるからなあ。これからガンバロー」
そのまま背中を向けて、手を振りながらこの場を去っていった。
葉月くんの遠くなっていく背中を見つめていると、先生が教室に来る姿も見えたので、あわてて教室の中に入った。
若干、教室の空気に気まずさを感じながら自分の席へいくと。
「……よかったじゃん。
葉月クンに守ってもらえて」
隣からこちらを見ずに、不機嫌そうな言葉が飛んできた。
「依生くんには関係ないでしょ……」
あぁ、もうバカみたい。
こうやって強がれば強がるほど、溝はどんどん深くなっていくのに……。
下唇をグッと噛み締めながら着席すると。