可愛がりたい、溺愛したい。
どうか転びませんように…無事にゴールできますように…なんて子どもっぽいことを胸の中で願う。
小学校や中学校の運動会ではあまりいい思い出がない。
いつも走ると、なぜか足がうまくついていかなくて、転んでばかり。
小さい頃は泣きながらかけっこをゴールしたことだってあった。
さすがに高校生になって転びたくはないし、泣きたくもない。
不安のままついに3組目がスタートの位置に立つ。
とりあえず1位なんて贅沢は狙わず、ゴールすることを目標に落ち着いて走ろう。
周りのすごい声援は、「いちについて」の声がかかると一気にシーンと静まり返り。
ピストルの音がパンッと鳴って、横一列からいっせいに走り出した。
ピストルの音が想像していたよりかなり大きくて、びっくりしたせいでスタートから出遅れてしまった。
しかも勢いよく飛び出していった子たちみんな速くて到底追いつけない。