可愛がりたい、溺愛したい。



思わず目を見開いて葉月くんの顔を見る。


「な、なんで葉月くんが!?」


「だって転んだまま起き上がらないから。
心配になってコースに割り込んじゃった」


「えぇ…!」


心配してくれたのはありがたいけれど、転んだ時よりますます注目の的になっているので、とにかく今のこのお姫様抱っこ状態から早く解放されたい。


だけど、助けに来てくれてよかったと思っていたりもする。


1人だったらどうしようもできなかったから。



「あー、膝擦りむいてるじゃん。
もうどうせビリだからこのまま抜けちゃおっか」


「えぇ!?」


そんなことしていいの!?と思っている間に、葉月くんはわたしを抱っこしたままグラウンドをあとにした。


ずっと女の子たちの悲鳴は止まらないまま。



***



「うぅ……めちゃくちゃ恥ずかしかったよ…!」


今ようやく校舎の中に入って、人目に触れなくなるところまできた。

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