可愛がりたい、溺愛したい。



気まずい空気が流れるまま、出口のゲートに着いたとき。


ポツッと冷たい雫が空から降ってきた。


見上げてみれば、少し前まで崩れていなかった空模様が今は崩れ始めていた。


そして次第に雨粒の量は増えていき


「うわー、一気に降ってきたね」


本格的にひどい雨が降り出してしまった。


急いでゲートをくぐり抜け、外に出たはいいけど、ここから駅まで走っても15分くらいはかかる。


傘を買おうにも、近くにコンビニは見当たらなくて。


こうしている間にも身体はどんどん濡れていくばかり。


すると、葉月くんがいきなり自分が着ていたパーカーを脱ぎ出して



「これ上から被ってればマシじゃない?」


「それじゃ葉月くんが濡れちゃうでしょ」


「いーよ、どうせもう濡れてるし」


雨に濡れた前髪を指ですくい上げて、いつもより艶っぽく、大人っぽく見えた。

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