可愛がりたい、溺愛したい。
「このままだとずぶ濡れになるの間違いないからさ」
突然腕をつかまれて。
「……ここから俺の家近いからそこで雨宿りしよーか」
雨音にかき消されることなく、はっきり聞こえてきた危ない提案。
断らなくては、またしても前のようなことになりかねない。
だけど、今この状況でわたしがとる選択はほぼ一択しかない。
葉月くんの家……。
きっと休みの日だから、家族の人もいるだろうし、何もそこまで警戒しなくてもいいんじゃないかって。
それに、もう何も気にすることはない。
万が一、葉月くんと何かあったって、依生くんにはもう関係ないことなんだから……。
きっと気にも留めないはずだから。
こういう軽はずみな決断がよくないんだっていつも後悔することが多いけど、
今はどうでもよくなってしまった。
「いい?俺の家連れて行って」
その問いかけに、ゆっくり首を縦に振った。