可愛がりたい、溺愛したい。
***
「ん、どーぞ。
何もない家だけど」
連れてこられたのは、とあるマンションの一室。
部屋に通してもらうと、家族の人がいる気配はない。
……というか、部屋はそんなに広くなくて、家族で住むような広さじゃないような……。
それに、生活感があまりないような。
テーブルと、そばに1人が寝れるくらいのサイズのベッド。
それと、結構場所を取っているクローゼット。
すぐそばに狭いキッチンらしい場所。
……明らかに家族で住んでいる広さじゃない。
他に部屋はなさそうだし。
どう見てもこれは……。
「俺いま一人暮らしだから、家族とかいないよ」
やっぱり……。
完全に油断してしまっていた。
家族がいるだろうって。
まさか一人暮らしとは……。
つまり、いまこの空間は2人っきり。
「父親が単身赴任で、母親がそっちについて行ってんの」
偶然にもわたしの家族とまったく同じ状況。