可愛がりたい、溺愛したい。
どうしてそんなこと聞くんだろう……なんて、少し引っかかったけど。
「……好き、だよ。
冷たく突き放されても、嫌いになれない…くらい」
その瞬間、カチッとドライヤーのスイッチが切れた音がして、シーンと静まり返った。
まだしっとり濡れた髪。
完全に乾いていないのに、どうしてスイッチを切ったんだろう。
すると、後ろから優しく包み込むように抱きしめられて。
「……やっぱ俺には勝ち目ないのかあ」
抵抗しようとしたけれど、弱そうに吐き捨てられた言葉のせいで振りほどくことができない。
「ご、ごめんなさい」
「なんで謝るの?」
「だって……葉月くんの気持ちに応えることができなかったから」
「こんなサイテーな俺に謝るなんて、先輩はほんとお人好しだね。
しかも、前のことがあったんだから俺とこんなふうに簡単に2人っきりになっちゃダメじゃん」