可愛がりたい、溺愛したい。
「……そーだね。
あ、もし三崎先輩に愛想尽かしたらいつでも俺のところきてもいいよ?」
冗談っぽく笑って、依生くんを見ながら言う。
「……ほんと生意気」
「それは褒め言葉として受け取っておきますね。まあ、せいぜい帆乃先輩なら嫌われないように頑張ってくださいよ。
隙があったらいつでも俺が奪いにいくんで」
また冗談か本気かわからないことばかり言って。
「渡すわけないし。
こんなかわいくて仕方ないのに」
「あーあ、惚気はご勘弁なんで。
それじゃ邪魔者はそろそろ退散しますか」
そう言って、手元の紙袋をわたしに渡してきた。
そして、そのまま何も言わず教室を去ろうとする後ろ姿に思わず声をかける。
「あ、あの葉月くん……!
こんなわたしのことを好きになってくれてありがとう……っ!」
わたしの声にピタッと足を止めて。
こちらを振り向くことはないまま。