可愛がりたい、溺愛したい。
依生くんでいっぱいなのに。



「……は?
何バイトって。僕聞いてないんだけど」


デジャヴ……。

真っ先に浮かんだ単語はこれ。


「ってか、このやり取り前もしなかった?
まさかまた葉月クンとナイショのことしよーとしてんの?」


「ち、違うよ!今回は本当にバイトなの。
お母さんの知り合いの人のお店の手伝い頼まれて」



さかのぼること数日前のこと。


お母さんの昔からの知り合いで、浅川さんって人がいて、小さなケーキ屋さんをやっている。


なんでも、息子さんともう1人バイトの子がいるらしいんだけど。


急にバイトの子が辞めてしまい、人手が足りないから誰かいないかって相談されたみたいで。



それでお母さんが、わたしに許可も得ずに勝手に引き受けてしまったことを告げられた。


お母さんは、「もうオーケー出しちゃったの。お願い、次のバイトの子が見つかるまで手伝ってあげて…!ね?」と、必死に頼み込んでくるから断れず。

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