可愛がりたい、溺愛したい。
「……帆乃のそーゆー鈍感なとこ嫌い」
拗ねた顔のまま、わたしの頬をむにっとつまんで、今度は両頬をむにゅっとしてくる。
「うぅ……な、何が?」
「なんでそんな男に鈍いの?」
「え?」
「生意気な葉月クンの時もそーだけど、鈍すぎなんだって。あいつ……名前忘れたけど、ぜったい帆乃に気あるよ」
「あいつって、浅川さんのこと?」
「知らない、名前なんて興味もない。
ってか、帆乃のこと狙ってる男の名前なんて覚える気にもならない」
「ちょ、ちょっとまって…!
それは誤解だよ、そんなことないから!」
「……出た、帆乃の鈍感」
いや、これは鈍感とかじゃないし!
誤解してるの依生くんのほうだし!
「依生くんが勘違いしてるだけだよ!
だって浅川さん彼女いるもん。わたしなんて眼中にないよ」
バイト中とか、平気で彼女の惚気話とかしてくるくらいだし。