可愛がりたい、溺愛したい。



「……帆乃のそーゆー鈍感なとこ嫌い」


拗ねた顔のまま、わたしの頬をむにっとつまんで、今度は両頬をむにゅっとしてくる。


「うぅ……な、何が?」


「なんでそんな男に鈍いの?」


「え?」



「生意気な葉月クンの時もそーだけど、鈍すぎなんだって。あいつ……名前忘れたけど、ぜったい帆乃に気あるよ」


「あいつって、浅川さんのこと?」


「知らない、名前なんて興味もない。
ってか、帆乃のこと狙ってる男の名前なんて覚える気にもならない」


「ちょ、ちょっとまって…!
それは誤解だよ、そんなことないから!」


「……出た、帆乃の鈍感」


いや、これは鈍感とかじゃないし!

誤解してるの依生くんのほうだし!



「依生くんが勘違いしてるだけだよ!
だって浅川さん彼女いるもん。わたしなんて眼中にないよ」


バイト中とか、平気で彼女の惚気話とかしてくるくらいだし。

< 321 / 360 >

この作品をシェア

pagetop