可愛がりたい、溺愛したい。



「……顔上げて、僕のほう見てよ」


顎をクイッと持ち上げられて、しっかり目が合った。


あぁ、やだ。
視線が絡み合うだけで、すぐ余裕がなくなる自分が。



「なんでそんな不安そうなの」


「不安……だよ。
わたしは依生くんみたいに余裕があるわけじゃないから……っ」


涙腺が緩んで、瞳に少しだけ涙がたまる。



「いつもいつも……、わたしばっかり余裕がなくて…。そういう経験がないから仕方ないってわかってるのに……。

それなのに、依生くんは慣れてるし、余裕だし。きっと過去にそういうことを他の女の子としてきたんだって……」



もう最悪……。

過去のことにヤキモチ焼いてるって宣言してるようなものだし。


今度こそ呆れて、「もういいよ」なんて言われてしまうかと思ったのに…。



「……余裕なんかないよ。
いつも帆乃を目の前にしたら、余裕なんて吹っ飛んでるから」

< 331 / 360 >

この作品をシェア

pagetop