可愛がりたい、溺愛したい。
「……顔上げて、僕のほう見てよ」
顎をクイッと持ち上げられて、しっかり目が合った。
あぁ、やだ。
視線が絡み合うだけで、すぐ余裕がなくなる自分が。
「なんでそんな不安そうなの」
「不安……だよ。
わたしは依生くんみたいに余裕があるわけじゃないから……っ」
涙腺が緩んで、瞳に少しだけ涙がたまる。
「いつもいつも……、わたしばっかり余裕がなくて…。そういう経験がないから仕方ないってわかってるのに……。
それなのに、依生くんは慣れてるし、余裕だし。きっと過去にそういうことを他の女の子としてきたんだって……」
もう最悪……。
過去のことにヤキモチ焼いてるって宣言してるようなものだし。
今度こそ呆れて、「もういいよ」なんて言われてしまうかと思ったのに…。
「……余裕なんかないよ。
いつも帆乃を目の前にしたら、余裕なんて吹っ飛んでるから」