可愛がりたい、溺愛したい。



わたしがどんな気持ちで幼なじみをやっているか、依生くんはぜったい知らない。


好きなんて想いを持っていることなんか。



だったらその幼なじみって立場を最大限まで利用してしまえばいいって。



ずる賢い、小賢しいと言われてもいいから。


依生くんだけは手放したくないから。



自分勝手な想いが空回りした結果。



わざと何もできないフリをして。
依生くんがいないとダメになる幼なじみをやればいいって。



そうすれば、優しい依生くんは1人じゃ何もできないわたしを放っておくわけないから。




「可愛い帆乃は僕のだよ」


いつも依生くんは口癖のようにわたしに可愛いって言ってくれる。


そのたびに、すごく嬉しくて、恥ずかしくて、胸がキュウッて縮まって。



でも、その可愛いは、きっと依生くんにとってはそんな大したものではない。

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