可愛がりたい、溺愛したい。
だったらキスされるくらい、いいじゃん……なんて軽い考えじゃ済まされない。
だって、わたしに気持ちはあるのに依生くんに気持ちがないキスなんて……。
想いが一方通行な、気持ちの通っていないキスなんてしても虚しいだけ。
「へー、それは僕じゃないってこと?」
「言わない……言いたくない」
「そんなに気に入ってんだ、葉月クンのこと」
さっきまで甘かった雰囲気は一気に変わって、乱暴にわたしの手首をつかんで
「ムカつくなあ、帆乃が他の男見てるの」
矛盾ばっかり。
依生くんのわたしに対する態度は幼なじみを簡単に超えている。
誰だってこんなことを言われれば、こちらに気持ちがあるかもしれないって誤解する。