私、強引で甘く一途な御曹司にドキドキさせられっぱなしです!
石川への憎しみが消えるわけは無い。


だが、暴力を振るう男は、恭香は絶対に嫌いなはずだ…


ただでさえ俺は、自分の気持ちを上手く言えずに強引な態度で恭香を怖がらせているんだから。


それに、俺が逮捕されたら、会社にも迷惑がかかる。


父さんの血のにじむような苦労を知ってるから…


子どもの頃からずっと見てた父さんの夢、それを汚すようなこと、俺には絶対出来ない。


ごめん…恭香。


俺は、とにかく、こぶしを必死の思いでひっこめた。


もう二度と恭香に近づかないよう恫喝し、石川を部屋から追い出した。


それが、俺が出来る精一杯だったんだ。


『恭香、大丈夫か?』


駆け寄ると、恭香は一気に安心したのか、俺の胸に顔をうづめるようにして眠った。


俺は、恭香を一度ベッドに横たわらせてから、両手で抱き上げて部屋を出た。


その日は、もう朝まで、恭香は目を覚ますことなく眠ったままだった。
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