私、強引で甘く一途な御曹司にドキドキさせられっぱなしです!
『まったく、本当に使えな~い。だから新人は嫌なのよね』


辛辣だ。


こういう女性は正直…


苦手だ…


いや、嫌いだ。


先輩の女性は、


『入れたら呼んで』


と、言ってどこかに行ってしまった。


二十個以上のお茶を入れながら、その女性は言ったんだ。


『頑張ってたら、良いことあるよね、絶対に』


ポツリとつぶやいたその言葉。


そのひとことが、不思議と、がむしゃらに頑張って、がむしゃらに生きて来た俺の心に無性に響いた。


疲れた心を優しく癒してくれるような、そんな感覚でもあった。


彼女が入れたお茶は、本当に美味しくて…


ホッとした。


それから、何度かお茶を入れてもらう機会があって…


先輩の女性が、いかにも自分が入れたように愛想をふりまいていたのが気に入らなかったが、そんなことより、彼女の優しくおだやかな笑顔を見るのが、毎回楽しみになっていった。


いつしか、彼女は別の部署に異動になってしまったようだったが、その頃には、もう、俺の気持ちの中には…


完全に、恭香が…いたんだ。
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