好きになるには理由があります



 清春と一緒に片付けをし、二人で家に帰る。

「あのご夫婦は万理と同じマンションの人なんだ。

 大きな神社は祈祷の受付時間決まってるけど、此処なら融通が利くからって万理に紹介されたらしい」

 深月の自転車を押してくれながら、清春が言う。

「そうなんだ?
 じゃあ、万理さんにお礼言っとかなきゃねー。

 こういうのをきっかけにして、マンションの若い人たちもお祭り覗いてくれるといいね」
と深月は言ったが、

「まあ……、なかなか難しいだろうな」
と清春は言う。

「そういえば、今日は早かったんだな」

「うん。
 今の時期はそう忙しくないから」

 こうして昔のように二人並んで歩いていると、清ちゃんにプロポーズされたことなんて嘘みたいだ。

 そんなことを考えながら、深月は清春に笑いかけたが。

 前を見たまま、清春は言い出す。

「また船長に船で誘拐されて帰って来ないんじゃないかと思ったよ」

 なんだろう……。

 一瞬にして、空気が凍ったぞ、今。

 そのまま清春は沈黙し、気まずいまま家に帰ると、五歳になる従兄弟の子の空太(そらた)がどたどたと玄関先まで迎えに出てきた。
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