好きになるには理由があります
 従兄弟も奥さんも仕事が遅くなると言うので、預かったらしい。

 せっかく迎えに出てきてくれたので、深月は、
「空太ー、ハゲめくりしよっかー」
と言ってやったのだが、

「ハゲめくりってなに?
 もしかして、坊主めくりのこと?」
と言われた挙句に、

「あれ、飽きた」
と言われる。

 しょっちゅう家に来ている空太は甥のようなもので可愛いが。

 五歳ともなると、だんだん生意気になってくる。

 だが、
「英孝は甥だ」
と言った陽太を思い出し。

 ……まあ、杵崎さんが甥よりは可愛いか、と思い直して、遊んでやることにする。

「深月、深月ー、あんたがたどこさしようよー」
と空太は言ってきた。

 親が、深月のことを深月、深月と呼ぶので、子どもまで呼び捨てが移っている。
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