好きになるには理由があります




「ばいばーい。
 また遊んであげるね、深月ー」
と玄関で喜美に抱っこされた空太に手を振られる。

 こらっ、と空太に言った喜美は、
「ありがとう、深月ちゃん。
 これ」
とお菓子をくれた。

 最近できたお店の可愛いクッキーの詰め合わせだ。

 それを手に機嫌よくリビングに戻っていると、
「単純だな」
と清春が言う。

 さっきまで、空太に振り回されて、ヘトヘトになっていたからだろう。

 いや、誰だって美味しいものをもらったら機嫌よくなるはずだ。

「はい」
と深月は一番大きなクッキーを清春に渡した。

「……ありがとう」

 サクッと音をさせて齧った清春は、
「うん、美味い」
と言う。

 ちょっと笑った清春に、
「単純だね」
と言い返してやると、

「……そうじゃない」
と言う。
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