好きになるには理由があります
 で、今度は、その子が私になぞなぞ出してくれたんですよ。

『車にずっと乗ってる人は?』

 って言うから、

『暇人』
 って言ったんですけど、エンジンでした」

「まあ、用もないのに乗ってるんだったら、暇人には違いないかな」
とよく通る男の声がする。

「っていうか、最初のなぞなぞの正解は……?」
と深月が大きな太い柱を見ながら、呟くと、

「洗濯バサミだろ」
と陽太が言った。

 彼女の声は、まだ柱の向こうから聞こえてきている。

「そういえば、その子、将来、錠剤になりたいって言ってたんですよね」

「……なんだ、錠剤になりたいって」

 連れの男のその言葉を、深月たちもそのまま彼女に言いたかった。

 二人の頭の中では、すでに白い錠剤の着ぐるみを着た人間が立っている。

「ああ、それはたぶん……。

 あ、電話だ」
と彼女はスマホに出たようだった。
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