好きになるには理由があります
「ぽすが脱走したみたいです。
 帰りましょうか」
という声とともに二人は席を立ったようだった。

 錠剤はっ?
と深月は身体を左右に振って、なんとか柱の向こうを見ようとしたが、見えなかった。

 知らない人なのに、追いかけてって、錠剤がどうしたんですかと訊きたくなる。

 そんな深月の様子を見て、陽太が、
「どうした? 気になるのか」
と訊いてきた。

 自分も柱の向こうを見るような仕草をしたあとで、
「気になるのなら、興信所を使って、今の二人を探そうか」
と言い出す。

 いや……そこまでじゃないです、と深月が思ったとき、重富たちが横を通っていった。

 もう食べ終わったらしい。

 深月は奥さんに頭を下げ、その腕に抱かれている赤子に手を振る。

 重富が背が高いので、あの子も高くなりそうだな、と思う。
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