好きになるには理由があります
 結局、使えなくて、むなしい思いで眺めることにならないだろうか。

 いやいや。

 こうして迷っては立ち止まるから、俺の人生、パッとしないんじゃないのか?

 会長の親族だと言って支社に行ったら、変にこびへつらわれたり、やっかまれたりするんじゃないかと思って伏せてみたりもしたが。

 陽太の奴は、堂々とやってきて、結構上手く支社長をやっているし。

 一宮とも、するっと仲良くなって、今ではベッタリ側に居る。

 そうだ。
 考えすぎはよくないっ、と杵崎は立ち上がった。

「これくださいっ」
とその自転車を指差す。

「まいどありっ」
とオヤジが笑った。





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