好きになるには理由があります
月曜日。
いつものように船と競争しながら、深月は職場に向かっていた。
陽太が笑ってこちらを見ているのが見えた。
昨日のキスを思い出し、赤くなる。
いや、頬になんだが……。
ふと見ると、駐車場に杵崎が居た。
車の陰に立っている。
「おはようございます。
乗っていきますかー?」
といつもの癖で言うと、杵崎はいつものように、
「いや」
と言ったので、そうですかー、と行こうとしたのだが。
「こっちに乗れ」
と杵崎が言ってきた。
「は?」
と深月は自転車に跨ったまま、訊き返す。
「これに乗れ。
俺も漕ぐ」
と言いながら、杵崎が車の陰から現れた。
その辺の道路で走ってるのはなかなか見ない二人乗り、タンデム自転車とともに。