好きになるには理由があります
 陽太の休みの調整が上手く行かず、仕事終わりにちょっと滝行に出かけようという話になったのだ。

 いや、ちょっと滝行とか言うと、舐めている感じだが。

 深月も異動したばかりで時間がとれなかったのだ。

「さっと行って、さっと帰れば大丈夫だ」
と陽太は言う。

 なんだかもう本来の目的を忘れ、行って帰ってくることが目的になっている気もするが……。

 よりにもよって、神楽の練習まで入ってしまったが。

 ともかく、清ちゃんには感づかれまい、と深月は思っていた。

 いろいろ突っ込んで訊かれて、ややこしい話になりそうな気がしたからだ。

 何故、滝行に行かねばならないのかとかも追求されたくない。

 そんなわけで、二人はずっと消えるタイミングを窺っていた。



< 273 / 511 >

この作品をシェア

pagetop