好きになるには理由があります
 そもそも、最近やけに気合が入っている支社長が途中で帰るの変だし、と深月が迷っていたとき、則雄が陽太の肩を叩いた。

「よし、じゃあ、陽太たちは一通り型もついたことだし。

 今日はもういいぞ。

 家でじっくり自主練習してこいよ。

 清春。
 篝火の配置だが」
と言いながら、則雄は図面を手に清春のところに言って話し出した。

 ……これは、と深月は陽太の目を見る。

 チャンスかっ? と陽太も深月を見た。

 その二人のアイコンタクトに割り込むように、別の視線が絡んでくる。

 オカメの面のように、にんまり笑った則雄がこちらを見たのだ。

『恩に着ろよ。
 今度、酒でも持ってこい』
とその顔には書いてある。

『わっ、わかりましたっ!』
と深月と陽太もその顔に書いた。
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