好きになるには理由があります
 え? と思う深月に万理は言う。

「莫迦ね。
 取りに戻ったら、清春に気づかれるでしょ。

 すっと抜けなさいよ」

 あんた、ハズレのコンパでも上手く抜けられないタイプね、と言われる。

「今日は帰ってこなくていいからね。

 うち、今日、旦那が出張なんで、律子たちと宴会なの。

 あんたも呼ぶことにしたって言っとくわ。

 それで、呑んで寝ちゃったって言えばいいじゃない」

「万理さん……」

「別にあんたのためだけじゃないわよ。

 もう――
 
 清春を解放してあげて」

 そう万理は言った。

「もしかしたらってずっと思いながら、諦めきれないのはつらいのよ。

 私は旦那に巡り会えたけど。

 清春はあんたを好きなまま時間が止まってる。

 でも、あんたが結婚したら、さすがの清春も諦める……

 はず」
と清春をよく知る万理は不安そうに言った。
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