好きになるには理由があります
「いや、でも、清春より、あの船長の方が強引だわ……。

 いざとなったら、あんたを船で連れ去ってくれるわよ」

 船で連れ去ってくれるのとこはやけにリアルですね、と思ったとき、万理は一緒に外に出ながら、

「さ、これであったかいものでも食べて」
と何故か五百円のクオカードをくれる。

「えっ? いいですよ」

「餞別よっ。
 頑張ってっ。

 さっきそこで、鍼灸院でもらったっていうクオカードを三田のおばあちゃんがくれたから、あんたにあげるわっ」

 さあ、行ってっ、と送り出された。

 なんだかわからないが、ありがとうございます、と思う。

 自転車は来る前に家に戻してきていたので、深月は足早に海の方へと向かった。




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