好きになるには理由があります
頭を獅子にカプッとやられる夢を見て、一宮深月《いちみや みつき》はうなされていた。
だが、誰かが強く抱きしめてくれている。
ああ、なんか落ち着くな……。
お母さんとはまた違うけど。
そう思ったところで、一度、深月の思考は停止した。
この腕の太さ。
胸板の厚さ。
抱きしめる力の強さ。
お母さんじゃない……。
そもそも、子どもじゃないんだから、お母さんでさえ、抱っこして寝るとかないっ。
誰っ!?
と深月は目を開けた。
体格のいい若い男が自分を抱きしめている。
そこでまた、誰っ? と思い、深月は顔を上げた。
男の喉元しか見えなかったからだ。